“健康大好き”日本人の落とし穴

テレビに雑誌にSNSと、日本のメディアには健康に関する情報が溢れています。日本人の健康への関心度は世界でもトップクラスかもしれません。こさか家庭医医療クリニックの小坂文昭さんもそう実感する一人。胃がんの原因として広く知られるようになったピロリ菌一つを例にとっても、日本人なら名前くらいなら聞いたことがある程度の反応があるのに対し、イギリスではほとんどの人が知らないことを知り驚いたそうです。

効果がなくても勧める場合も

「このサプリメントは効果があるか?」「こんな治療法を聞いたことがあるが、実際どうなのか?」。そんな質問を頻繁に受けるという小坂さん。医学的に正しければ勧め、そうでなけば勧めないとしながらも、その人の気持ちが癒やされると判断した場合は、効果が期待できなくても「試したらいかがですか」と消極的ながら勧めることがあるといいます。

健康知識欲の背景、フリーアクセス

このように日本人の旺盛な健康知識欲の背景には、「長生きしたい」と思う意識の高さと、日本の医療ならではのフリーアクセス制度があると、小坂さんは指摘します。 フリーアクセスとは、受診する医療機関を自由に選べるということ。自分が「病気だ」と悟ったとき、近所の診療所でも大きな大学病院でも、かかりたいと思ったらどこの病院でも気軽に行くことができる便利な制度です。

情報過多が招くドクターショッピング

しかし、小坂さんはフリーアクセスが招く「ドクターショッピング」の弊害を指摘しています。ドクターショッピングとは、患者がかかる医療機関を曖昧な理由をもとにコロコロ変えてしまうこと。患者自らの判断で、がんなど重い病気だと思いこんでしまうことから生じることもあるといいます。そうした行動をとってしまうのは、いつでも情報が手に入り、自分で判断して病院を選べてしまうことに原因があると、小坂さんは言っています。

今こそ健康とは何かを考えよう

小坂さんは、豊富な知識が得られる状況は必ずしも悪くないとする一方、それらが消費されるだけになっていく状況を危惧すると語っています。もしかしたら間違った知識をもとに、健康を害する方向へ進んでいるのでは?そんな間違った道に流されないよう、今こそ健康とは何かを考えてほしいと、小坂さんは家庭医の立場から提唱しています。 参考書籍:小坂文昭著「ムダな通院を減らすたった1つのこと」(BYAKUYA BIZ BOOKS刊) 筆者プロフィール 足立謙二 時事通信記者を経てフリーライターに。雑誌「昭和40年男」、ねとらぼなどエンタメ系サイトなどでサブカル、アニメ、特撮などを中心に執筆。Twitterアカウントは@adaken