家庭医はもっと身近になる

家庭医は、専門医の垣根を超えた網羅的な知識と技能を武器に、病状から悩み事などの心理面、生活習慣など患者が抱える包括的な問題を診断する“プロの見立て屋”だと語る、こさか家庭医医療クリニックの小坂文昭さん。家庭医は、今は「隠れた存在」ながら、今後ますます身近な存在になっていくと期待する一方、複雑な問題も横たわっているようです。


今は1000人に2人だけ

日本プライマリ・ケア連合会が認定する家庭医は、全国で673人(2017年10月31日時点)。日本の医師人口全体と比べると1000人に2人しかいない計算です。しかし、医学生に聞いた「どの診療科の医師になりたいか」とのアンケートで「総合診療」と答えた割合は14.5%と、内科、小児科に次ぐ人気を占めたと言います。この傾向は、これからの医療は地域医療が基点となることが認知されている証拠だと、小坂さんは言います。

懸念される「2025年問題」

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達する「2025年問題」が懸念されています。2030年には、後期高齢者は2012年時点の1.5倍に急増すると言われ、これまで国を支えてきたボリューム人口が支えられる側に回ることになり、社会保障財政のバランスが崩れることが確実視されています。一方で、人間は高齢になるほど、生活習慣病など医療費がかさむ病気を患うリスクが高くなります。そういった治療を受ける患者のほとんどは、総合病院を使うと言われます。

地域機関より総合病院を選ぶ傾向

しかし、そこで問題になるのが日本の医療の特徴である「フリーアクセス」だと小坂さんは指摘します。日本の医療体制は、入院の必要がなく外来で処置できる「第1次医療」、入院・手術が必要な「第2次医療」、それよりも重篤な患者に対応する「第3次医療」から成り立っています。しかし、どの病院でも気軽にかかることができるフリーアクセスは、この体制と必ずしもリンクしておらず、地域の診療所の外来で済むはずの症状でも、総合病院を選んでしまう傾向が強いと言います。

フリーアクセスが招く現場の負担

その結果起こるのは、総合病院の過酷な勤務体制だと、小坂さんは言います。外科医を例にとると、外来の患者の総合診療に始まり、手術が必要なら自ら執刀し、術後の診療から退院まで全て一人で担当しなければならないこともあるとか。さらに当直も多いとなれば、たとえ高度に磨き上げたプロフェッショナルの医師でも本来の力を維持できるか難しいという小坂さんの主張も頷けます。とはいえ、それが原因で医療ミスが起きたとしても、そんな言い訳は通じません。

地域シフトが家庭医ニーズを呼ぶ

日本では医師不足が問題視されているのも周知の事実。国も問題多発の中で「地域包括ケアシステム」を打ち出し、従来の「病院完結型」地域医療と介護へのシフトを図りつつあります。しかし、受け入れ体制は不十分で、自宅での医療を強いられる患者は確実に増えると見られます。そこで必要になるのが家庭医だと、小坂さんは指摘します。先に触れた医学生アンケートに現れた総合診療重視の流れは、このことを先取りしている証拠だと言えるでしょう。

参考書籍:小坂文昭著「ムダな通院を減らすたった1つのこと」(BYAKUYA BIZ BOOKS刊)

筆者プロフィール
足立謙二 時事通信記者を経てフリーライターに。雑誌「昭和40年男」、ねとらぼなどエンタメ系サイトなどでサブカル、アニメ、特撮などを中心に執筆。Twitterアカウントは@adaken

    
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