家庭医はストレスの強い味方

総合力を強みとする家庭医には、精神疾患やストレスを訴える患者も頻繁に訪れるといいます。特にストレスの悩みを抱えているのは、20〜30歳代の比較的若い年代に多いようです。社会人になって日が浅く、仕事や人間関係で壁にぶつかることなどが原因と思われますが、ストレスがたまるほど、医療機関を転々とするドクターショッピングに流れる傾向が強くなると、こさか家庭医医療クリニックの小坂文昭さんは言っています。まずは、小坂さんの体験談を見てみましょう。

ある日突然違和感、重病では?

一般企業で営業を担当していた30歳代半ばのある男性。奥さんと3歳の息子との3人暮らしで、それまで大病をした経験はなく体に不安を覚えたこともありませんでした。ところが、大きな仕事を終えたばかりのある日、食事をする時に喉の通りが妙に悪い感覚に見舞われました。いつもなら近所の診療所を受診するはずが、つい重病ではと思い込み大きな総合病院の耳鼻咽喉科を受診しました。

風邪の診断も膨らむ不安

診断結果はウィルス性の風邪。男性は納得できないながら処方された薬を4日分飲んだものの、違和感は残ったまま。それどころか喉のつかえはひどくなった気さえし、最初の不安は膨らむばかり。心配した男性は、家にあった医学書を読んだりネットで調べたり、病気の原因を独自で探ろうとしました。

喉頭がんを疑うも…

その結果浮かんだのは「喉頭がん」への疑い。男性は改めていくつかの病院で診察を受けましたが、どこも診断は「ウィルス性の風邪」。「本当は重病なのではないのか」と問いただしても「本当にそうだったらそんな違和感に気づいたときにはもう手遅れだよ」と笑い飛ばされたとか。

生活に影響する事態に

それでも男性は、あらゆる病院に通い続け、肺のレントゲンまで撮ってもらって喉頭がんを否定されてもなお、重病説の疑いは晴れませんでした。その頃には仕事もおぼつかず、家庭のムードもどんよりした空気になってしまっていたそうです。

原因はストレス、医師の不用意な一言も

小坂さんは、この男性が陥った症状は大きな仕事で生じたストレスが原因だと指摘しています。その反動から体が異変を起こしたと思いこみ、様々な情報が不安を掻き立てたのではないかということです。さらに追い打ちをかけたのが、例の笑い飛ばされた「気づいたときにはもう手遅れだよ」の一言。もしその医師が家庭医で、男性の心まで見てあげられる力があったら、彼がその先ドクターショッピングを続けることはなかったかもしれないと小坂さんは言っています。 参考書籍:小坂文昭著「ムダな通院を減らすたった1つのこと」(BYAKUYA BIZ BOOKS刊) 筆者プロフィール 足立謙二 時事通信記者を経てフリーライターに。雑誌「昭和40年男」、ねとらぼなどエンタメ系サイトなどでサブカル、アニメ、特撮などを中心に執筆。Twitterアカウントは@adaken