家庭医は終末医療もケアする

患者1人だけでなくその家族全体、ひいては家の構造への気配りまでが家庭医の仕事の範疇だという、こさか家庭医医療クリニックの小坂文昭さん。であれば、自ずと家族の一員の最期に関わることにもなります。そしてその日は、突然やってくるのです。


「手術しないという選択もあります」

小坂さんは、高齢者になると、家庭医がどれほど予防を勧めても、すべてのリスクが消えるわけではないと指摘します。病気らしい病気をひとつもせずに大往生を迎える人はまずいないとも。医師はその人の予防を考える上で、時には「手術しないという選択もありますよ」と告げるケースもあると言います。

難手術で迫られる究極の選択

例えば、大動脈瘤(大動脈がコブのように病的に膨らんだ状態)の切迫破裂の恐れがあり、破裂しかけの血管を人工血管で代替するという、手術の成功が五分五分な場合。医師は「もし手術をしなければ、近いうちに死を迎えることになります。私どもができるのは、それまでの苦痛をやわらげることです」と家族に説明することになります。

事前の話し合いも簡単ではない

このような事態に直面して、動揺しない家族はいないでしょう。合理的な答えなど得られるはずがありません。理想を言えば、親がある程度年をとった段階で、生死に関わる状況に直面したときはどう対処すべきか、家族で話し合っておくべきなのでしょう。しかし、これは極めてデリケートな問題。親によっては「おれを殺したいのか!」と話がもつれてしまいかねません。

訪問診療のはじめに話し合う

小坂さんは、そうした困難にならないよう、高齢の患者に対してなるべく早い段階で終末医療の話をするようにしていると言います。一番最適な最初のタイミングは、訪問診療を始める時とのこと。家族が同席することも多く、一度に話が伝わりやすいというわけです。その際尋ねるのは「一番好きな最後の迎え方」と「最高の最後の迎え方」。やわらかい言い方で詳しく聞き出すといいます。

誰もが迎える日のために

そのうえで、延命治療を望むか望まないか、蘇生のための緊急搬送を望むかまで確認する必要があると言います。そこまで小坂さんが考えるのは、誰もが迎えるその時を、慌てることなく、患者本人だけでなく家族も安心して過ごせるようにとの思いからだと語っています。

参考書籍:小坂文昭著「ムダな通院を減らすたった1つのこと」(BYAKUYA BIZ BOOKS刊)

筆者プロフィール
足立謙二 時事通信記者を経てフリーライターに。雑誌「昭和40年男」、ねとらぼなどエンタメ系サイトなどでサブカル、アニメ、特撮などを中心に執筆。Twitterアカウントは@adaken

    
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