方言小説の魅力

2018年度の上半期の、第158回芥川賞を受賞した若竹千佐子の『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)は、著者の出身地である岩手県の方言が生きた小説です。

おひとりさまの老後

これは著者の実体験が投影された小説であるといえるかもしれません。この物語の主人公の桃子さんは、夫に先立たれてしまいます。2人の子どもがいますが、つかずはなれずの関係であり、主人公はひとり暮らしです。やることといえば、テレビのドキュメンタリー番組を見てわからないことをノートに記して図書館で調べ物をするといったことや、たまに病院へ行くことくらいです。当然有り余る時間の中において、著者の過去の思い出や夫に関することなどが思い出されるのです。

会話がない?

『おらおらでひとりいぐも』は独特の文体が採用されています。主人公が過去を思い出す場面においては会話はかぎかっこでくくられておらず、心象風景のように描かれています。いわばそこにあるものは、すでに老成をむかえてボケ始めている人の思考のようにも思えます。人がゆっくりと老いていく、その中で人生を反芻している様子がうまい具合に描かれているのです。これからの日本、といってもすでにそういう状態になってはいますが、超高齢化社会をむかえる日本において生まれるべくして生まれた小説であるといえるかもしれません。