エッセイストとしての小林紀晴

小林紀晴は写真家として知られています。故郷の長野県の諏訪地方を舞台とした御柱祭などを長年撮り続けてきた人物です。さらに90年代には会社をやめてアジアを旅し、そこで知り合った若者たちの姿を追った「アジアン・ジャパニーズ」シリーズでも知られました。

新たな旅

現在の小林紀晴は、かつてのような旅する若者ではありませんが、女優の鶴田真由とインドを旅してその様子を写真集として発売しています。かつてほどのペースではないにせよ、小林紀晴は新たな旅をはじめたとも記されていました。そんな彼の最新作が『見知らぬ記憶』(平凡社)です。

何が書かれているのか?

本書に書かれている内容は、小林紀晴の身辺雑記といえるものです。さらに『アジアン・ジャパニーズ』の元ネタにもなっている詩人の金子光晴についての記述もあります。彼は、旅をしなくなったといっても、ずっと同じものを抱えていたのかもしれません。それは表現を志す人にとっては普遍的な価値を自分の中に持ち続けることの意義を問いかけるものであるといえるかもしれません。『アジアン・ジャパニーズ』の時代から変わっていない、彼のかざらない文体にも注目です。写真家としてだけではなく、エッセイストとしての小林紀晴の変わらない姿を感じ取ることができる一冊に仕上がっているといえるでしょう。