変わり種の青春物語

学生生活というのは、その人それぞれの思い出が詰まっています。さらに教育というのは、それぞれにバリエーションがありますので、一風変わった学校に通っていたという人もいるのではないでしょうか。変わり種の校則といったものは、そうした話をする時の定番ネタです。


変わり種の青春

そうした青春録の中で変わり種といえる世界を知ることができるのがヤン・ヨンヒによる『朝鮮大学校物語』(KADOKAWA)です。この学校は、東京都小平市にある、北朝鮮系の最高教育機関です。日本で言うところの大学にあたる場所です。この学校を卒業した人間は基本的には日本各地にある朝鮮学校の教師となっていきます。

日本語禁止の世界

在日朝鮮人である主人公のミヨンは、大阪から東京の朝鮮大学校へ進学します。目的は東京で演劇や映画に触れることでした。しかし朝鮮大学校は全寮制であり、外出に関しては許可がいる自由のない世界です。そうした中で、ふとしたきっかけで隣の武蔵野美術大学に通う青年と知り合います。二人は映画や音楽はもちろん、芸術について語り合えるかけがないのない仲間となります。しかしながら、ふとしたことで別離を迎えてしまいます。それは自然に発した一言が、見知らぬ誰かを傷つける可能性がある。そのような繊細な感覚として記されています。

自由がある、自由がない?

もうひとつ象徴的なフレーズとしては「自由」があるでしょう。美大に通う恋人は、放任主義の学校ゆえに制約がなさすぎて困ると嘆きます。しかしミヨンの学生生活は制約だらけであり、その悩みを理解できないとともに、嫉妬するほどの羨ましさも感じます。カルチャーギャップとはこのようなことを言うのかもしれません。

自伝的小説?

これは著者自身の自伝的な小説であると言えるでしょう。著者は、実の兄が帰国事業で北朝鮮に戻り、現地で病死しています。小説の中では姉という設定になっていますが、クラシック音楽好きで日本で手に入るCDとプレイヤーをお土産に持参する様子などは、日本とあの国が近くて遠い国なのだとわかります。青春はただそこにあるだけの純粋なものではありません。社会に政治に世の中に翻弄される残酷なものだと知らされます。

    
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