自分史エッセイを味わう

自分史なる分野があります。自分がどのように育ってきて、両親はどのような人か、あるいはどう感じてきたのかといったことをつぶさに整理していくことは、自分を見つめ直す契機となるかもしれません。

味わいのあるエッセイ

自分史は、味わいのあるエッセイとして結実することもあります。こだまによる『ここは、おしまいの地』(太田出版)はまさにそうした珠玉の名作のひとつに数えられるでしょう。著者はセンセーショナルなタイトルで話題となった『夫のちんぽが入らない』の著者です。この作品は夫との出会いから現在までを記したものですが、その前章というべきものが本作です。著者にはちょっと変わり種の人といったイメージがありますが、本作を読めば、その人を作り上げた環境というものも見えてきます。

不器用すぎる生き方

本書に記されている家族の姿は強烈です。頑固者でものすごく偏屈な父親、さらにそこに従う母親、なぜこんな人と結婚したのかと尋ねれば「悪人ではないから」といった、まっとうな理由が戻ってくる。さらに、車に轢かれたはいいものの、相手が若者だったので「将来のために今すぐ逃げなさい」というおじいさん、といった変わり種の人たちが、ユーモアたっぷりに描かれています。もちろんつらいこと、嫌なこともたくさんあったのでしょうが、文章として書かれるとどこかほっとする印象もあるでしょう。これはある意味ではマジックリアリズムでもあると言えるかもしれません。綺麗ごとばかりではない家族の話を読みたい人にはおすすめです。