歌詞からふりかえるアーティストの半生

戸川純による『戸川純全歌詞解説集:疾風怒濤ときどき晴れ』(Pヴァイン)は、デビュー35周年を迎える戸川純が、自らの作詞した歌詞からアーティスト半生を振り返るユニークな本です。

歌詞と人生が直結

戸川純が歌詞を通して語る半生は壮絶です。実の父親から虐待を受けていた過去、さらにのちに自殺してしまう妹、女優戸川京子との思い出、自身も女優活動をはじめることによって異なるイメージがついてミュージシャンとしては悩んでいたことなど、さまざまです。いわば彼女の歌詞による表現は、彼女自身の人生と直結していたといえるでしょう。これを正面のインタビューからリニアに語っていくのではなく、歌詞から語られるという構成は見事です。

説明ができる

なにより戸川純自身が聡明な人物であり、自分の人生を歌詞を通して説明できる人でもあったということがわかります。もちろん商業的な音楽活動を行うわけですから、レコード会社やスタッフの要請といったものもあるでしょう。さらに、その時に彼女が興味を持っていたものも浮き彫りになっています。いわば本書は戸川純自身による戸川純論であるばかりではなく、その時代における時代論、状況論にもなっているといえるでしょう。ミュージシャン関連本は多く出ていますが、文字だけでここまでその人を浮かび上がらせることができたのは対象のチョイスと、編集の妙の双方が奇跡的なコラボレーションを果たしたからともいえるかもしれません。