行き場のない若者の話を読む

旅というのは今も昔も、どこか遠い場所へ旅立つ思いがともなうものです。どこか日本社会からの逃避といった意味合いがあるのも確かでしょう。90年代のバックパッカーの姿を描いた小林紀晴『アジアン・ジャパニーズ』(新潮文庫)などにはそうした空気が色濃く現れています。さらに、角田光代による『東京ゲスト・ハウス』(河出文庫)もそうしたお話の一つです。


行き場がない

主人公の若い男性は、半年ほどの東南アジア放浪の旅から日本へ戻り、彼女のもとへ電話をかけます。すると知らない男性が電話に出て、すでに彼女が新たな恋人と生活をはじめ、自分は捨てられたと気づくのです。親も頼れない友人も頼れないと追い詰められた主人公は、アジアの旅で知り合った女性のもとへころがりこみます。そこには、格安のシェアハウスのような場所で、行き場のない人たちがたむろしています。

どんな人たち?

このゲストハウスに集う人たちは奇妙な人たちです。同じく世界中を放浪しているような男女のカップルや、まったくしゃべらない不気味な男性、さらにはやたら旅にまつわる説教をするオジサンも現れます。誰もがどこかクセのある人たちであったといえるでしょう。むしろそういう人たちを受け止める場所が東京という巨大都市の寛容さであるともいえるかもしれません。どこか自分が宙に浮いたような存在だと思う瞬間は誰しもあるでしょう。そんな気分を味わえる一冊です。

    
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