「買わなきゃ、住んでる家を燃やすぞ!」マンション勧誘、脅威の逆ギレ商法!

日本の不動産事情も、東京オリンピック開催発表以来、好景気を迎えている。
そんな中、マンションの悪質な勧誘販売が増えているそうだ。
しつこいセールスや脅迫まがいの言動が原因の国民生活センターへの相談件数は、史上最悪の3千件を超える勢い。

そして、今回話を聞いた不動産販売業のJさんもそんな不動産の悪評を作りだす1人。
景気悪化で手持ちの物件を在庫処分しようと躍起になる業者が相次ぐ中、泣き落としや恫喝、軟禁、相手の会社に出向くなど、悪どい手法で善良な市民にマンションを売りつけている。「買わないなら住めなくする!」という企業理念をモットーに、ムリくりなアプローチでお客を貶める手口を彼に語ってもらいたいと思う。


客を殺してでも売ってこい!

オレが大手マンション販売会社『エクシール(仮名)』に就職したのは7年前のこと。当時は不景気とはいえ、まだまだ他の業種よりは、ツレからは一目置かれるほど給料も数段マシだった。しかし、この1年で状況が激変する。

「おい! 何じゃこの成績は!! オドレ、売る気あるんかい!」
「ス、スンマセン!!」

こんな時勢でマンションなんか売れる訳はない。だが、会社は大型スーパーの一区画を間借りして客へのチラシ配布や近隣へのポスティングなど全力でバックアップしていると成果を求める。オレたち営業マンは、朝礼で営業部長に釘を押された。

「お前ら、テレアポなんてやっとんちゃうやろな!!」
「……」
「客、騙くらかしても、殺してでも売ってこんかい!!」
「は、はい!!」

上の人間は限りなく暴力団関係に近い。かく言うオレも元を正せば、企業舎弟の会社で働いていたすねに傷を持つ人間だ。名の知れた企業なのに、社員のほとんどが月収10万円前後にまで落ち込んでいた。よし、こうなったらやったろうやないかい!!
オレたちはこうして、宅建法では違法なやり方で、売れ残りのマンションをさばくことを決意した。

手口としては、まずは絶対に会社名を名乗らず勧誘する。

「中学の同級生のJやけど、覚えてるか? 今度あって酒でも飲まへんか?」
「J? まぁ、ええけど…」

その他には別の会社の社員を名乗ったり、年金の件で市の職員を名乗ったり、まんま、マルチ商法やオレオレ詐欺だ。だが、個人情報がある程度そろっているので、無理がない。それからは、会うなり、職場に何度も電話をかけるなりしてマンション購入の話をふる。
それからはいつも以上の口八丁手八丁。

「今が底値ですわ! 数年には7百万円の利益が出るし、保証人不要で銀行から格安で融資を受けられるように段取りがついてます。駅前物件やし、客ももう付いてるんですわ。ええ話でしょ?」
「ホンマやね! すごい」
「でっしゃろ? ほな、早く契約お願いします!」

投資目的で新築マンションを購入するヤツは、欲の皮が突っ張っている。正直人口減少が進み、これから値段は下がることも考えられる。賃貸が主流になるのに、利益が出ると言われて、その気になるアホばっかりや。
とにかく、こんな方法でオレは強引に7軒の契約を取った。

断れば出前を注文、胸倉を掴み、殺すと凄む!

オレの手口は、その7件の契約を皮切りにさらに強引になった。
ランダムに選んだ客の家に夜10時頃に電話をし、「会って話すまでは何度も電話をかける」と、深夜まで2~3時間も切らせない。それから無理やりファミレスで会い、10時間ほど返さないこともザラだ。
ここまでくると根負けして契約してしまう客も少なくない。もちろん、断られるケースもある。

「ワンルームマンションを投資目的にいかがですか?」
「しつこいなぁ! 消費者センターに通報しますよ!いい加減にして!!」
【ガチャ!】

ムッカァァ~!! オレはソッコーで近くの寿司屋やそば屋などを調べ、大量の料理を届けさせた。バ~カ! ええ気味や。
さらに、横柄な態度をとられたときには…

「マンションがお買い時です!老後の生活資金にもなりますし……会いませんか?」「時間があらへん! 他を当たってくれ」
「オウ、こら! おまえ、誰に口利いとるんじゃ! オドレ、家に火をつけたろか!!」

こんな脅迫は日常茶飯事なってきた。その後は勤務先にまで恫喝の電話を入れる。我ながらしつこい男だ。
その他の悪質なやり口は、1日30回以上の電話営業、金利などの計算ができない客にローン返済額が今の家賃よりも2倍にもなるようなムリなローンを組ませる、買わなかった場合には自宅前で待ち伏せ、自宅への居座り、数戸のマンションを一気に買わせるetc…破綻しようが、自殺しようがローン会社が保証すること。オレには関係がない。

毅然と断れる客はごく稀。もちろん、こんな『威迫』などの悪質な勧誘行為は宅建業法で禁じられている。クーリングオフの規定もあるが、そんなことをすればただでは済まさない。というのも、こちらにも契約解消はキツいペナルティーがあるのだ。
そして、その強引さは輪をかけていく。それが失敗の元だった。

温水洋一風の気の弱そうな客を前に喫茶店でオレは饒舌に購入を勧める話を終えた。

「どうですか? 決めはったら?」
「い、いや…、ぼ、僕は正直払っていける自信がないんです。正社員とはいえ、工場勤めで給料安いし……」
「これだけ説明してるのに……」
「ええ、いい話やというのはわかるんですけど……やっぱりしんどいと思います……」
「……おい、コラ。ええ加減にせえよ。おまえみたいなヤツのために時間裂いてるんやぞ!! ゴオラァァ!!」
「……」
「お前を追い込んだる! 家族に気ぃをつけとけよ! 乗り込んだるからなぁ!!」

相手の胸倉を掴み、脅し文句が決まった。大体は、恐怖心と疲れで正常な判断力を失って契約することになるのだ。
すると、温水が突然叫びだす。ん…ど、どないしたんや?!

「ウオオォォォォ!!」

温水が突然雄叫びをあげ、カバンの中からカナヅチを取り出した。ア、アカン!

「ウワワァァァ~!!」

店を飛び出すオレ。ヤツは泣きながらカナヅチをブンブンと振り回しながら追いかけてくる。ひ、ひぃぃ~お助け!
それから、会社にまで押しかけてくるのではないかと肝を冷やしたが、やつの姿を二度と見ることはなかった。

こんなことは、今現在困窮している大半のマンション販売業者が行っている。おそらく、違反行為で行政処分を受けるもの時間の問題だろう。

客を見かけで見くびることはなくなったが、オレは懲りずに今でも売れ残りのマンションをバカな客に押しつけている。

(丸野裕行)

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