消費税と不動産価格。マンション価格決定のからくり

消費税増税が5%から8%になることが決まりました。消費税増税前に大きな買い物、特に不動産を購入しようとする人は増えます。しかし、本当に消費税増税前に購入すべきなのでしょうか? 消費税と不動産価格の関係を紹介します。


消費税アップは値上がりではない

消費税がアップすると、アップした分、消費税込み価格は値上がりします。そのため消費税のアップが予定されると、分譲マンション業者は「駆け込み需要」がくると考えます。

実は、消費税アップ前の駆け込み需要の後に「反動」が来ないように、消費税アップ後の購入でもアップ分還付されるような政策もとられます。しかし、実際には「どうせ買うなら消費税アップ前に買おう」というお客様は多く訪れます。

また、各現場では目先の契約が大事なので、消費税が上がると物件価格が上がるかのようなセールストークを展開するため、マンション購入検討者は消費税増税前にマンションを購入しようとします。

しかし、これは「煽り」です。消費税が上がるからといって、マンションの価格は値上がりなどしません。まずはマンションの価格の基本的なルールを理解しましょう。

マンションの価格はどう決まるか?

マンションの価格は、土地の価格と建物の価格の合計です。土地価格には消費税は課税されないので、消費税アップは関係ありません。建物価格にのみ消費税が課税されます。

マンションの価格が税抜き4000万円で土地と建物の割合が同じ50%だとすると、土地の価格が2000万円建物価格が2000万円となります。建物のほうに5%の消費税が課税されると、消費税は100万円となり税込み価格は4100万円となります。消費税8%になれば消費税が160万円になり物件価格は4160万円になるので、160万円の値上がりになります。そのため、こう言うのです。

「同じ物を買うのに60万円多く払うのはもったいないから消費税がアップする前に買いましょう!」

消費税が5%にアップした時も住宅の価格は下がった

消費税が3%から5%にアップしたのは、1997年4月1日です。しかし、1997年から1998年にかけて、住宅の価格は上がるどころか下がっています。5%アップの時も、消費税が上がると分譲マンションの価格も上がるかのように煽りました。そしてその煽りで購入したお客様はたくさんいたのです。

また、5%から8%にアップする際も、アップ前の駆け込み需要の反動によるアップ後の「反動」を考慮し、政治の世界でも税制による救済策やエコポイントのようなおまけで、住宅需要の冷え込みをなんとか回避しようとします。

駆け込み需要の「反動」で分譲マンションの価格は下がる

分譲マンションの価格は、需要と供給のバランスが価格決定に大きな影響を及ぼします。消費税アップによりもし価格が上昇すれば、需要はより冷え込むのですぐ価格が下落するのです。

これが消費税アップによる分譲マンション市場の予測される影響なのです。消費税の税率のアップは、物件価格の上昇に直接繋がるとは言えず、むしろ煽れば煽るほど「反動」による下落に繋がってしまうのです。

分譲マンション価格決定のメカニズム

分譲マンションの販売センターで、あらかじめ土地価格と建物価格と消費税が決まっている物件はほとんどありません。

分譲マンションを販売する時の価格決定では土地と建物の割合を考慮して決定などしていないからです。まず総額で、予定価格表をつくり、商談し強弱を見極め調整して価格決定をします。購入決定するまでに見る価格に関する情報は、この他には登記費用などの諸費用のみです。そうして、各住戸で商談が進むと価格決定です。そしてその決定した総額に対して、後から内訳を決定するというのが価格決定のプロセスです。

価格内訳の決め方

内訳を決める際、土地の販売価格をなるべく高く設定します。少しでも消費税の額を減らしたいからです。実勢の土地の単価や、建物の原価に対して建物価格が低くならないようにバランスを考え、なるべく土地価格を高く設定するのです。

つまり、マンション購入者がいくらの消費税込み価格で買ってくれるかを見極め、内訳は後から決めるのです。つまり総額の価格決定メカニズムの中に消費税率はあまり関係ないのです。

消費税アップ前に買うと損をする

消費税がアップすると、アップ分は分譲マンション業者側の納税額が増えます。消費税アップ前に購入してもらわないと困るのは、デベロッパー側であって、お客様側ではないのです。

「どうせ買うなら消費税アップ前に購入したほうがアップ分お得ですよ」という営業トークは、「どうせ買うなら消費税アップ前に購入したほうが我々デベロッパーにとってアップ分お得ですよ」というのが本当の意味なのです。

このような仕組みの中で分譲マンション価格は決定されるので、購入検討者にとっては消費税率の変化というのは、直接的には購入を決めるにあたって考慮する必要などないのです。

買い時は消費税アップの後

ただし、消費税のアップがもたらす需給バランスの変化には、よく注目する必要があります。消費税アップ後の反動を避けるための政策は、その分で値上げしても大丈夫にするために業界が政治に要望しているのです。

実際は価格アップなど発生しようがないのですが、やはり消費税アップ前には購入者心理とデベロッパーの煽り作戦により駆け込み需要が発生します。この駆け込み需要は「駆け込み」というだけに本来消費税アップの後に購入するはずの需要の先食いが多くを占めています。

そうすると「反動」で消費税アップ後の需要は減ってしまいます。そのため、消費税のアップの後は需給バランスでいうと価格が下落傾向に振れる可能性が高いのです。つまり、 消費税アップの前後で分譲マンションを購入するなら、「アップ前よりアップ後」になるのです。

焦りは禁物

とにかく不動産取引に「焦り」「急ぎ」は禁物です。焦って買い急ぐと失敗します。「一生で一番高価な買い物」なのですから、じっくり吟味して下さい。もし、慌てて購入する必要があるとしたら、大幅な物価上昇にともなうマンション価格のインフレーションが起きることがわかった時くらいです。大きな経済状況の変化によりインフレが起こるとわかっている時以外、新築マンションを購入するなら消費税がアップしてからで遅くないのです。むしろ消費税アップ後のほうが狙い目です。

消費税アップは地価の下落へ

消費税のアップ分は短期的にはデベロッパーの負担増ですが、長期的に見ると、デベロッパーが買う土地代に影響します。つまり地価を下げてしまうということになります。言い換えれば地主の資産価値を下げることになります。つまり、 分譲マンション事業における消費税のアップとは、資産デフレを促進させてしまうということになるのです。

資産デフレが起きる理由

デベロッパーには用地取得時の収支基準があります。収支基準には利益基準が設定されていますが、「税抜き売上原価=利益」です。消費税がアップしても、税込み価格はそうそうアップできないのが分譲マンションマーケットです。

税込み価格が同じで消費税額が増えれば、売上は消費税抜きですから売上減少となります。売上が減れば利益は減りますから、消費税率アップ前と同じように利益を捻出しようとしたら原価を減らさなければいけません。

分譲マンション事業における原価は、用地取得費と建築費です。デベロッパーによる用地取得競争は常に激しいものです。分譲マンションの価格を決める大きな要素は需給関係ですが、分譲マンション用地についても需給バランスによって優位性が決まるのは同様です。そして常に需要が供給を上回っている状態です。このような理由からまずは建築費の圧縮に向かいます。

しかし、 建築費の圧縮が限界までくると、消費税アップ分の原価圧縮は用地取得費となります。消費税アップで土地価格の下落ということになるのです。このような理由で、分譲マンションにおける消費税のアップは地価の下落に繋がってしまうのです。

新築分譲マンション以外の消費税

個人が売主の中古マンションであれば、物件価格に消費税はかかりません。もし中古マンションも視野に入れているなら、仲介手数料等の手数料関係にしか消費税は課税されません。消費税アップは、中古マンション市場には影響を与えません。

ただし、不動産業者が一度買い取ってから転売する中古マンションには、建物代金に消費税が課税されます。

注文住宅と消費税

注文住宅のような工事を発注する請負契約のようなケースは、消費税を意識した方がよいでしょう。注文住宅のようにコストを積み上げていって最後に合計金額に消費税を掛けて総額を出す契約では、消費税をお客様に転嫁しやすいのです。いつまでに契約していつまでに引渡しを受ければいいのかよく確認しておく必要があります。

賃貸住宅と消費税

家賃には消費税はかかりません。もともとは家賃にも課税されていましたが、非課税となりました。もし、現状消費税が課税されていたら、すぐに大家さんか管理会社に申し入れしましょう。ただし、貸付期間が1ヶ月未満の場合は課税されます。また借りる時に不動産業者が仲介で入る場合の仲介手数料にはかかります。借地の地代もかかりません。

このように不動産価格と消費税は大きな関係性があったのです。不動産、特に新築マンション購入を考えている人は、焦る必要はありません。消費税アップ後を狙ってもよいのではないでしょうか。

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