兄弟不仲が招く相続問題

親から不動産を相続し、複数の兄弟の共有にした家を売却しようとしたら、変に話がもつれてしまった、というケースは結構耳にします。日頃から兄弟仲が良好なら大きな問題にはならないはずですが、ちょっとした行き違いがもとで、簡単に売れない“困った不動産”に変貌してしまうことがあります。何故そんな事になってしまうのでしょうか。

弟が勝手に持ち分を売ってしまった

もつれるケースとしてよくあるのが、共有しているうちの1人が他の兄弟の同意を得ずに自分の持分だけ売ってしまったというパターンです。実際にあった例ですが、父親が住んでいた築50年の家と土地を2人の兄弟で相続することになった際のこと。父親の面倒をよく看ていた兄が取り分を多く主張したことに弟が納得せず、均等分割することで決着しました。ところが、お金に困った弟は、自分の持分だけを、知り合いの会社経営者にたった20万円で売却してしまったのです。

兄もたった20万円で手放すことに

これにより、家の権利の半分が第三者に渡ってしまい、もう半分を所有している兄は、その家に勝手に住むことも誰かに貸すことも売却することも、建て替えることさえできなくなってしまったのです。結局、兄は自分の持分を地元の不動産会社に、弟の売却額と同じ20万円で手放すことに。築50年の家と土地が、たった40万円で渡ってしまった事実は悲劇というほかありません。その後、この物件は、兄の持ち分を買い取った不動産会社と弟の分を所有していた会社経営者との間で対立することになりました。最後は、裁判を経て競売にかけられて750万円で落札。折半により双方が375万円を分け合うことで決着しました。

選択肢はいくらでも

もちろん、弟が早まったことをしなければ、この750万円は兄弟のものになっていたはず。弟はどうするべきだったのか?理想的なのは、兄と一緒に家と土地を売却し、売却代金を持分割合に応じて分け合う方法です。それが困難でも、第三者に売却する前に、兄に自分の持分を買い取ってもらうよう交渉する余地はあったはずです。うまく行けば、20万円どころか375万円に近い金額を手にできたかもしれません。何れにせよ、共有物件である以上、自分独自の判断だけで先走るのは禁物。兄弟は日頃から仲良くしておくのが一番です。


参考書籍:田中裕治・著、小木正和・監修『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)