小林紀晴の「アジアンジャパニーズ」【深夜特急につぐおすすめ旅行記】

今日でも多くの旅行記が出版されていますが、時流を反映しているものが多くあります。円高が進めば経済的なお得な旅が流行り、韓流ブームならば韓国お買物ツアーが流行るといったものです。

旅行本で永遠のベストセラーは沢木耕太郎の「深夜特急」シリーズでしょう。元は全三巻の単行本として刊行されましたが、その後、六巻の文庫本となり読み継がれています。そののちにポスト「深夜特急」として登場したのが「アジアンジャパニーズ」です。


90年代の遺産

「アジアンジャパニーズ」は写真家の小林紀晴による著作です。それまでカメラマンとして務めていた新聞社を辞め、23歳で旅に出ます。そのアジアの旅先で知り合った人びとを写真に収め、旅に出た理由を訪ねてゆく。さらに、その3年後にアジアで出会った人びとに再びに会いに行くというのが本のおおまなかな内容です。

「深夜特急」との違いは、旅を特別なものとして規定していないということです。「深夜特急」は冒険の世界です。そこには「俺、こんなことしてスゴイだろう」という勢いのようなものが伝わってきます。

しかし「アジアンジャパニーズ」の文体はとても落ち着いています。20代初めの著者がここまで諦観していたとは思えませんから、やはり意識的なものなのだと思います。作品に登場するアジアの町並みはどこもすすけています。同じ場所を現在訪ねるとするならば、経済発展を遂げている場所もあるでしょう。

90年代はじめの日本はバブルの時代でした。その時代にあえてアジアに旅立つという行為にギャップがあったからこそ「アジアンジャパニーズ」は成立したのかもしれません。

    
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