香港からはじまる、星野博美の世界

旅行記を読んで、どこか遠くの地に思いを馳せたい。そんな気分の時におすすめの作家が星野博美です。


めくるめく星野ワールド

星野博美は写真家としてキャリアをスタートさせましたが、その名が知られるようになったのは1997年の返還前後の香港に移り住み、街の風景や出会う人びとをレポートした『転がる香港に苔は生えない』でしょう。彼女は学生時代にも香港に留学しており、そこで知り合った人々との再会と別離も描かれています。この作品で星野は、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。

彼女は多くの中国旅行本を記しています。学生時代に留学した香港で知り合った白人男性と中国国内を鉄道の旅でめぐる『愚か者中国を行く』、マイナーな旅行地であった中国の華南地方を旅行した『謝謝チャイニーズ』などです。

彼女の魅力は旅行記だけじゃない

しかし、彼女の魅力は旅行記だけではありません。香港から日本へ戻ってきての気ままなアパート暮らしと身辺雑記を記した『銭湯の女神』は、平易な文章で記されていながら、するどい観察眼が溢れています。旅行記だけの人ではないのだと気付かされます。

実際、紀伊半島から房総半島の港町に移り住み、さらに東京へ出て商売を営んだ実家の一族のルーツを明らかにした『コンニャク屋漂流記』や、離島の合宿免許のドタバタを記した『島へ免許を取りに行く』など、あらゆるテーマを星野文体で記します。最新作『戸越銀座でつかまえて』においては実家に舞い戻った彼女自身の身辺雑記が記されています。

    
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