佐藤優「プラハの憂鬱」の世界

佐藤優は、多くのすぐれた小説、ノンフィクションの書き手として知られています。中でも、自身の青春期を回想した著作に名作が多いです。もっとも感性が研ぎ澄まされ、ストレスにさらされず自由であった時期ゆえに、幸福な体験を描きやすいのかもしれません。


「紳士協定」の続編

「プラハの憂鬱」は、外交官のロシア語研修でイギリスに滞在していた時の話です。亡命チェコ人の古本屋店主との知的交遊録を回想したものです。同時期を取り上げた佐藤の著作には、ホームステイ先で出会ったグレンという少年との交流を描いた「紳士協定ー私のイギリス物語」がすでに存在します。本作は「紳士協定」の続編というべき内容です。イギリス社会の中で、亡命者ゆえに二度と祖国へ戻ることのないチェコ人の古本屋店主と、観点的で知的な会話を佐藤は交わしてゆきます。

記憶の明瞭さ

驚くべきなのは佐藤の記憶力の明瞭さというべきものでしょう。交わされる会話、取り上げられた本、食べた料理や酒の味などが仔細に再現されています。もちろん小説と銘打たれているので一言一句が正確ではなく、思い出補正もあるのでしょうが、細かい描写がなされています。さらに、新人外交官の佐藤優は、外務省という組織に長くいられないことを予感する描写もあります。現在の時点から描かれたものであるので、状況に合わせたということもあっても、実際違和感を抱えていたことは確かなのかもしれません。

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