平井玄「ぐにゃり東京」

「ぐにゃり東京ーアンダーグラスの漂流地図」(現代書館)は、派遣の校正者として、東京各地を点々とする筆者の、地の底の視点から描かれたルポルタージュです。本書の題名の元となったものは、開高健が『週刊朝日』誌上に記したルポルタージュ「ずばり東京」から来ています。


「ずばり東京」の世界

「ずばり東京」は、1964年の東京オリンピックを前にして、変容しつつある東京の姿を描いた作品です。職人や街の風景を切り取るとともに、小説家としての開高健がルポルタージュに挑んだ力作です。「ずばり東京」では連載の回ごとに、切り口や文体を変えるといった実験的な試みが行われてきました。めまぐるしく移り変わる東京の姿を、変幻自在な文体でもってとらえようとしていたのです。さらに、文学史的な事象をおえば「ずばり東京」を書き上げたあと、開高健は、ベトナム戦争の取材へ赴きます。それがのちに「輝ける闇」に続く名作を生み出すことになるのです。

今は何が見えるか

奇しくも、2020年にふたたび東京オリンピックが開かれようとしています。それを前にして、派遣のフリーターとして、出版業界、広告業界の底辺に位置する筆者は、変わることのない収入(むしろジリ貧)、次々と参入してくる新たなフリーターたちの肖像(子持ち、あるいは純粋な貧困層の若者)を描ききります。歴史散歩などの空疎な東京論があふれる中においては重厚な仕上がりとなっています。

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