中上健次「十九歳の地図」の世界

中上健次という作家がいます。1946年、和歌山県新宮市に生まれ、1976年に「岬」で芥川賞を受賞します。これは戦後生まれとして初めての芥川賞となりました。その後、数々の名作小説を書き上げ、92年にわずか46歳の若さで没した作家です。


初期青春小説

中上健次というと芥川賞を受賞した「岬」と、続編となる長編小説「枯木灘」などに注目が集まります。さらに、故郷の和歌山県(中上の言葉で言えば紀州)を舞台とした数々の小説が有名です。それぞれの小説の登場人物は、ほかの作品にも登場し物語群(サーガ)を形成しているということでも知られます。

しかし「岬」以前にも、多くの青春小説を記しています。中でも「十九歳の地図」は名作にかぞえられます。

新聞配達少年が主人公

「十九歳の地図」の主人公は新聞配達を行う少年です。少年は、新聞配達先で、地図の上にバツ印をつけていきます。それは嫌な思いをさせられた相手であり、一方的に恨みを募らせる相手でもあります。何者も持たない無力な少年が一方的に抱く、あこがれであり、怨嗟でありという世界が描かれています。すべて一人称である「ぼく」を用いて物語は描かれます。もちろん実際に犯罪に手を染めることはしてはいけませんが、どこかしら共感するものもあるのではないでしょうか。さらに物語においても主人公少年は何もできずに終わることになります。圧倒的な無力感の地平というべきものがあふれる濃厚な青春小説に仕上がっています。

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