西村賢太「痴者の食卓」の世界

西村賢太は、自分の人生遍歴をテーマとする私小説の書き手として知られています。さらに、大正期の作家、藤澤清造に私淑し、すでに藤沢の墓のそばに自分の墓石を立てているほどの、思いの入れようです。


すべて同じ

西村賢太の小説はすべて同じ展開です。主人公の姿を投影したであろう北町貫多が、自分の情けない人生をふりかえり、心機一転仕事や、引っ越しなどで気分を変えようとするのだけれども、やっぱりいつもの自分に戻ってしまうというストーリーです。同じことをくりかえしているだけ、最後の結末はすべて一緒なのですが、なぜだかぐいぐいと読ませてしまいます。最後は怒りで終わるのですが、ガマンすればいいことがあると思わせます。実際主人公も一瞬思いとどまる場面が描かれています。そうだ、そのままでいいのだと思うですが、結局はさらに怒りを増幅させてしまいます。

秋恵もの

さらに、西村賢太の小説には秋恵ものというものがあります。これは、かつて付き合って同棲までしていた女性をめぐる話です。西村賢太の暴力癖が、身近な女性に向かう、つまりはDVものの話です。「痴者の食卓」には、そんな秋恵とのストーリーが収められています。些細なことから怒りが増幅され、喧嘩となり、最後は破滅に至る、ここでも西村賢太節が全開です。西村賢太入門編としておすすめの作品ですので、手にとってみてはいかがでしょうか?

「いろんな読書法」の詳細を調べる

    
コメント