坂口恭平と自動書記

坂口恭平という人間がいます。彼のことをどういう人間か説明するのは非常に難しいでしょう。建築家なのか、あるいはアーティストなのか、あるいは小説家なのか。彼は、「徘徊タクシー」という小説を記し、本作が芥川賞の候補となり、さらに日本ファンタジーノベル大賞を受賞しています。


現実宿り

そんな彼が記した小説が「現実宿り」です。これは、これまでの坂口恭平の小説とは異なった味わいがあります。ほとんど自動書記のように書かれた文字列が続きます。さらに繰り返しの文字列なども多く、最初に読むと非常にとっかかりにくい小説に思えるかもしれません。こんな小説、文学の新人賞の原稿で応募されてきたら一次選考で落ちてしまうのではないか、そんな印象を受けるかもしれません。

耐える小説

ですが、30ページくらい読んでいくと坂口恭平その人が立ち上がってきます。この奇妙なタイトルは「雨宿り」から取られているそうです。雨宿りは、これまでただ体を冷やしうたれた雨が変化する行為だと坂口恭平はいいます。現実に対して少し見方を変えるだけで、違った世界が見えてくる、「現実宿り」が示しているのはそうしたものなのかもしれません。

    
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