『桐島、部活やめるってよ』 −スクールカースト崩壊とその後を俯瞰できる作品−

話題の邦画「桐島、部活やめるってよ」。2012年も後半に差し掛かかったところで出てきた今年一番の話題作が出てきました。日本の青春映画史でまれに見る傑作と称される本作は、早稲田大学在学中の20歳の大学生のデビュー小説が原作となっています。とある進学校を舞台とし、スクールカーストを背景に書かれた5人の高校生の群像劇が主な内容です。題名にもなっている「桐島」ですが、作中にはほとんど登場せず、その代わりに登場するのが「桐島が部活を辞めた」という事実のみ。突然、桐島が部活を辞めたことで影響を受けるのは誰でしょうか。


■解釈の幅を生んだ「桐島、部活やめるってよ」

冒頭でいきなり流れる話、「桐島、部活辞めたってよ」。ただ単に、バレー部の頼れるキャプテンである桐島が部活を辞めただけの話。ですが、これはスクールカーストの入れ替わりを意味し、桐島周辺のスクールカースト上位グループのみならず下位までも巻き込んだ大騒動となります。大人になったり、高校生でもバイトをすると「学校」とは沢山ある社会の中の一つであると感じられますが、当時は「高校=世界」のように感じていた人が大半ではないかと想像します。なんだかんだ言って学校が大事だったはずで、そんな中で天変地異が起こったのです。

桐島が居なくなったことでヒエラルキー上位の人がドタバタして大変です。彼らなりの悩みもあることでしょう。しかし、それとは別にヒエラルキー闘争とは無関係であったり、関心が無い人たちもいるわけです。そのことに想像力を働かせるとただの青春映画には見えなくなっていくでしょう。「高校時代のことをほじくり出され、えぐられる」感じはそういった想像力や実体験をした人にしか感じられないと思います。

とは言いつつも、多くの人が共感できるもトピックもあります。それは、「何事にも打ち込めない不安」です。日本の先行きが不透明なことも相まって、高校生に限らず大の大人も頭を悩ますトピックである「何かに打ち込みたいのに打ち込めない不安」。「大体上手くいっているけど、特別何かに打ち込んでいたり、尖った部分がある訳でもなく、自分は何者でもない」という悩みがスクールカースト上位の者から見られます。

本作は「わかるわかる!」と共感を示す人がいる一方、「何言ってるかわからん」という人がおり解釈の幅が広い作品です。自分という一人称の視点のみだった高校時代も、天井から教室を見下げているかの如く見れること、それを可視化したことが話題を呼んだ本作。Twitterなどの他のメディアを見ている限り、カースト上位と思われる人たちと下位にいる人たちとでは笑いどころや、思ったことが違うそうです。

「おおかみこどもの雨と雪」とは異なり解釈の幅がある「桐島、部活やめるってよ」。原作、劇場版ともに最高に甘酸っぱくてイタい青春映画、オススメです。

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