究極のバイトサボり術

西村賢太といえば、私小説(わたくししょうせつ)の書き手として知られ、『苦役列車』では芥川賞を受賞しました。彼自身の人生が投影された北町貫太が、職と住居を点々とするストーリーが描かれます。


長編小説

西村賢太はもともと短編小説の書き手として知られていますが、いくつかの長編小説も上梓しています。東京を離れ心機一転横浜の造園会社で働いていた時代を回顧した『疒の歌』に続き、上野アメ横そばの洋食店で働いた時代を描いた長編小説が『蠕動で渉れ、汚泥の川を』(集英社)です。

夜のサボり

主人公は、高校を中退し、職を点々としますが、腰を落ち着けようと、洋食店で働き始めます。それと同時期にアパートを家賃滞納で追い出されてしまい、窮地の策として、洋食店の一角に住み込みで働かされてもらえることになります。後片付けを終えたあと、鍵の管理も任されるようになり、最初はおとなしくしているのですが、やがて悪癖としてサボり癖が出てきます。西村賢太の小説は、最初は心機一転気持ちをあらためて何かに挑戦しようとするのですが、持ち前の短気さからすべてを失ってしまう、同じパターンの繰り返しです。本書の展開もその例にもれないですが、破滅に至る気持ちの機微の描写の連続はきっちりと読ませます。

    
コメント