つげ義春をとらえなおす

つげ義春といえば「ねじ式」などで知られるシュールな漫画を描く作家といったイメージがあるでしょう。一方で、映画化もされた「無能の人」など、貧しく常に気を病んでいる自分の身辺雑記を記す私小説的な漫画のイメージもあります。しかし、それらはつげ義春の一面をとらえてはいますが、全体像ではありません。

面でとらえるつげ義春

『Spectator』(幻冬舎)41号のつげ義春特集は、そうしたこれまでのつげ義春像をとらえなおそうとする本です。文量は決して多くありませんが、本人の近況も記されていますし、年譜もあります。さらに主要な作品も再録されています。作品は「おばけ煙突」「ほんやら洞のべんさん」です。つげ義春が私小説的な作品を描き上げるようになる以前の、貸本漫画時代の名作、フィクションの名作として位置付けられるでしょう。

解読法も教示

さらに「名作の読解法ーー「ねじ式」を解剖する」対談構成・藤本和也・足立守正の企画もあります。つげ義春に関しては、シュールな絵柄を作者の強引な解釈、あるいは願望に当てはめたようなものも多くあるのですが、本作はあくまでも作品に寄り添うように読み込んでいるので好感が持てます。

スモールビジネスとしてのつげ義春

今こそつげ義春が読まれるべき理由はいくつかあるでしょう。たとえば本業の漫画家は不安定な仕事であるため、つげ本人は収入が得られる道として古本屋やカメラ屋の開業を試みています。これは現在では、スモールビジネスとしても解釈することができるでしょう。自由に生きるために、どのような基盤を整えてゆけばいいのか、日々の生活の中にどのように仕事を位置付けてゆけばいいのか。つげ義春の生き方には、これからの日本でどう生きてゆくかのヒントもあるといえるでしょう。