天安門事件と青春

天安門事件といえば、1989年6月4日に中国の北京で起きた、学生を中心とする若者たちによる民主化要求闘争だというのが一般的な見方です。多くの犠牲者を生み出し、中国の民主化を遅らせたとも言われています。いまだに中国国内ではこの事件について語ることはタブーとされ、事件の数字である「89」や「64」といった数字も忌み嫌われている。そんな話もまことしやかに囁かれています。


何があったのか?

その事件の当事者たちへインタビューを試みた本が安田峰俊による『八九六四:「天安門事件」は再び起きるか』(角川書店)です。本書で赴いた取材地は多岐にわたります。中国本土はもとより、香港、台湾、日本、果てはタイの首都バンコクにまで至ります。さらにテーマがテーマであるだけに、公式な回路を通しての取材は難しいでしょう。そのため、著者はインターネットで探し当てた相手や、たまたま中国で乗り合わせたタクシー運転手など、幅広い人間に話を訊いていきました。現在の中国はネットワークの監視網が確立し、このような取材は不可能であろうと著者は振り返ります。

青春録でもある

事件が起きたのはすでに30年近く前であり、当時20代だった人間は50代に、なっています。それでも当時のことを繰り返し訊かれることは、その後の人生を否定されるようなものではないのかという思いを著者は抱きます。特に、いまだに社会運動を続け、紋切り方の回答を続けるような人間ならばなおさらです。しかし、そのような人物からふと垣間見える本音を著者は見逃しません。あの事件の報道を通してしか理解していない人が読めばどんな言葉が溢れてくるのでしょうか。

    
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