放射線による「被曝」の影響

被曝とは、放射線を人体が浴びることです。被曝が人体にとって有害とされるのは、放射線が身体の組織や遺伝子を傷つけることがあるからです。放射線による「被曝」の影響を紹介します。


「外部被曝」と「内部被曝」

被曝には「外部被曝」と「内部被曝」の2種類があります。外部被曝は、放射性物質が身体の外にあるときに起こるものです。衣類や皮膚に付着した放射性物質からの放射線が身体に当たったり、通り抜けたりします。

内部被曝は、何らかの理由で放射性物質が身体の中に取り込まれたときに起こるものです。口から食べ物と一緒に入ったり、口・鼻から空気と一緒に吸い込んだり、あるいは皮膚から入ったりした放射性物質が、体内で放射線を出すことになります。

外部被曝より内部被曝のほうが危険

外部被曝より内部被曝のほうが危険です。洋服や身体の表面に付着した放射性物質はシャワーなどで洗い流すことができますが、放射性物質が身体の中に入ってしまうと、すぐには体外に除去(排出)できません。ものすごく近い距離から放射線を浴びつづけることになります。放射性物質が大気中に舞っているときは、花粉症対策と同じように、マスクなどで口や鼻をふさいだり、外から戻ってきたら洋服をはたいたりすることが大事です。それによって、外部被曝を少なくすると同時に、内部被曝もある程度防ぐことができるからです。

被曝すると人体にどのような影響が出るのか?

一度に1000ミリシーベルト以上の放射線を被曝すると、放射線が身体の組織や遺伝子を傷つけることによって「急性障害」を起こし、数週間で症状が現れるとされます。吐き気や頭痛、白血球の減少などの症状です。5000ミリシーベルト以上の被曝で下痢や出血、一時的な脱毛も始まります。さらに7000ミリシーベルト以上を被曝すると、生命の危機に陥ると言われます。

こうした急性障害のほか、被曝の人体への影響では「晩発性障害」が起こることもあり、注意が必要です。放射線を浴びてすぐに障害が現れなくても、数カ月~数年たってから障害や病気が出てくるのです。

被爆すると「発がん」の確率が上がる

晩発性障害の代表例が「発がん」です。国際放射線防護委員会(ICRP)によると「累積の放射線量が100ミリシーベルトを超えると発がんの確率が0.5%増える」と言います。放射線を一度に浴びるのではなく、被曝量が蓄積して100ミリシーベルトを超えると、がんのリスクが増大するのです。

精子や卵子への影響で不妊の可能性も

被爆の人体への影響では、「遺伝的影響」にも注意しなければいけません。大量に被曝した人の子孫に何らかの障害が出ることがある、とされているからです。精子や卵子への影響で言うと、男性は一度に100ミリシーベルトを被曝すると一時的な不妊になると言われています。女性は一度に300ミリシーベルトを被曝すると永久不妊になると言われています。

乳幼児や子供が被曝すると、甲状腺がんになりやすいのか?

甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌する器官で、喉仏の下、気管の前付近にあります。一般的に、甲状腺の病気は30~40代の女性に多く発症し、子供には少ないと言われています。ところが、1986年のチェルノブイリ原発事故では、事故5年後から甲状腺がんになる子供が増えはじめました。国連の調査では6800人以上が甲状腺がんになり、15人が死亡したと言います。

放射性物質の一つ、「放射性ヨウ素」は甲状腺に蓄積されやすい性質があります。放射性ヨウ素はβ線やγ線の放射線を出しますから、もし「放射性ヨウ素」を体内に取り込んでしまうと、甲状腺がんになる確率が高まります。とくに、乳幼児や子供はヨウ素の代謝が活発なので、放射性ヨウ素が吸収されやすく、そのために注意が必要なのです。子供の体内に放射性ヨウ素をなるべく入れないようにしなければいけません。内部被曝を防ぐということです。放射線量の高い場所(放射性物質が飛散している場所)ではマスクをしたり、洗濯物を外に干すのを控えたりします。食べ物については、2012年4月1日から適用される新しい「基準値」(一般食品は1キロあたり100ベクレル、乳児用食品と牛乳は50ベクレルなど)以下のものを選ぶことが大事です。

病院のX線検査でも被曝するのか?

「医療被曝」と言って、病院でX線検査などを受けても微量ながら被曝します。X線も放射線の一種です。胃のX線集団検診では1回で0.6ミリシーベルト程度の放射線を受けると言われます。胸部のX線コンピュータ断層撮影検査(CTスキャン)では1回で6.9~7.8ミリシーベルト、腹部のCTスキャンでも7ミリシーベルト程度の放射線を浴びるとされています。

また、放射線を使った治療も行われることがあります。がん細胞を死滅させるために、放射線をがん病巣に照射したりする治療では、X線などの診断目的の医療行為と比べて相当な量の放射線を浴びることになります。

医療被曝を伴う診断・治療などは受けないに越したことはありません。しかし、がん治療など、それで大きなメリットを得られるなら受ける必要があるかもしれません。その際に大事なのは、被曝量はどれくらいになるのかを医師に確認し、影響についても正しく知っておくことが大切です。

放射線による被爆の影響は甚大です。被爆による健康への被害を減らすように今回紹介した知識をみにつけましょう。

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