断片的なもの、の世界

岸政彦による『断片的なものの社会学』(朝日出版社)は、社会学者によるエッセイ集です。著者は沖縄や被差別部落といった、日本社会の周縁にあるものを研究しています。抑圧された歴史を声高に告発するといった、ジャーナリストのような作業ではありません。むしろ、当事者の声を丹念に聞き、中には生活をともにするといった作業を通して、人間の生活や歴史を浮かび上がらせます。本書にも、そのような視点が通底しています。


断片的とは何か

何か研究を成し遂げるにあたって、断片的なものというのは、追いやられがちなものです。なぜならば、有機的なつながりを作り出すことが研究活動であるからです。研究というのは何かしら将来的な人間の発展に寄与するものでなければいけません。断片的なものをつなぎあわせて、そこに共通する何かを見出すということも不可能ではありません。しかし、それは、偶然であったり、あるいは強引であったりします。あとから物語を作るということはいくらでもできてしまいます。人間はそれほどいい加減なものです。ですから、断片的なものは切り捨てるというのが世の中の主流といえるでしょう。

マイナー礼賛ではない

ところが岸政彦は、断片的なものにこそ注目します。それはマイナーなものではありません。ただそこにあるだけの断片的なものです。断片的なものの例としてあげられる、ネット上に綴られた無数の日記、さらに、長らく更新されないままネット上をさまよいつづけている日記のデータ、そのようなものをふりかえる、注目することによって、社会の全体像が見えてくるのかもしれません。

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