故人からつむぐ文化史

芸能人や作家、政治家などの著名人が亡くなった時に、その人の来歴を振り返る追悼記事が出されることがあります。しかし、どれも線でなぞったようなものばかりであり、現在ならばウィキペディアの記述でも代用できるようなものが少なくありません。それは、常に新しいニュースが量産されており、さらには掲載されるスペースも限られているため仕方がないといえるでしょう。

じっくりと振り返る

そんな故人たちの姿をじっくりと振り返っている本が近藤正高による『一故人』(スモール出版)です。本書はもともと長さに制約のないネット媒体で記された記事を元にしたもので、多くの著作や資料から、じっくりとその人の姿を書きあげているのが特徴です。

時代になっている

本書で取り上げられる人物たちは政治家の浜田幸一にはじまり、俳優の高倉健、菅原文太など、日本の一時代を築き上げてきた人たちです。当然多くの人たちとの交流があり、あの事件の知られざる真相といったものまで、エピソードには事欠きません。本来ならば一冊の本が書けるようなエピソードにあふれた人物たちを、著者は一定の分量の記事に見事にまとめあげます。かなり密度の高い本に仕上がっていますので、ひとつの記事がまるで一冊の本であるかような深い味わいを感じることができます。さらに巻末には年度ごとの物故者のリストもありますので、そこで亡き人たちに思いをはせるのも良いでしょう。