知られざるテキヤの世界

テキヤと呼ばれる職業があります。お祭りの場所などで屋台を出す人々を指します。漢字では香具師とかきます。これがヤシと読むことから、インターネットスラングでは香具師を現す言葉として「奴=ヤツ」を目にすることもあるでしょう。

知られざる世界

渡辺眸の『TEKIYA 香具師』(地湧社)は知られざるテキヤの世界に迫った写真集です。1960年台末に、3年間にわたってテキヤの人々に密着した女性カメラマンの写真集となっています。当然、そこに映るテキヤの人々は戦前生まれであり、戦争経験者が多くいます。1960年台といえば、日本では東京オリンピックが開催され、高度経済成長期の真っ只中にあたります。そこにおいて旧来の伝統文化とともに生きるテキヤの人々の暮らしが本書には記録されています。

何が映っている?

本書では、お面に当時の人気キャラクターだったオバケのQ太郎がいたり、あるいはテキヤの大物の葬儀の場面が映されていたりと、あらゆる情景が存在します。それだけカメラマンの渡辺眸が、対象となるテキヤの人々の信頼を得ていたという証拠でもあるでしょう。写真の背景から、日本の近現代がいりくんだ風景などが覗けるのも魅力です。記録文化の魅力を思う存分に感じられる一冊に仕上がっています。