アルジェリア人質事件から考える欧州のテロ対策事情

1月16日に起きたアルジェリア人質事件。発生の背景には「フランス軍によるマリ軍事介入がある」と報道されました。日本にいると、主に「アメリカのテロとの戦い」については耳にしますが、欧州のテロリズムに対していかに対策しているのか、あまり知られていません。今回はその欧州の「テロ対策」を見ていきましょう。


■欧州で多国籍化するイスラム過激原理主義のテロ攻撃

アルジェリアのイスラム過激派原理主義組織「武装イスラム集団(GIA)」は1994年のエール・フランス機ハイジャック事件を皮切りに、翌年にはパリの地下鉄サン・ミッシェル駅爆弾テロ事件を起こします。GIAはフランスまでテロ・キャンペーンを拡大させると、97年にはアルジェリア市民への無差別虐殺を始めました。2004年にはアルカイダがマドリードとロンドンで、06年の夏期にはアルカイダによって、ドイツ、イギリス、デンマークで周到に練られたテロ計画が、07年にはロンドンとグラスゴーで連続自動車爆弾未遂テロ事件が実行されました。

■テロ対策ワールドサミットで重視された「テロの情報革命化」

昨年9月の第12回テロ対策ワールドサミットでは、「テロの情報革命化」が問題視されました。最新の傾向としてソーシャルネットワーキングサービス(SNS)など、テロリストがインターネットを通じて犯行声明を発表する情報手段の多様化や極秘に連絡を取り合い、簡単に発見できないような犯罪ネットワークのシステム構築の技術が進化しているというのです。今回、アルジェリアで起きた人質事件は大手企業の厳しいセキュリティの中、「なぜテロが実行できたのか」疑問の声が多数上がる中、内通者の存在が明らかとなりました。それも、テロリストの洗練された情報技術の飛躍が背景としてあるためではないでしょうか。

■欧州刑事警察機構が出入国フィルタリング強化

キャンブリッジ大学ジョージ・ジョッフェ教授著の「欧州連合マグレブ諸国における民主化とテロ対策」によれば、「フランスはアルジェリアを初めとするマグレブ諸国に対し、緊張したグローバル・ガバナンスを増長させる安全保障軍務と、非合法な移民やテロリストを雇用していると疑わしい人の国外追放を断行することで、歴史的に長期的視座に立った『テロ対策』を行ってきた」と述べています。欧州レベルでは、欧州刑事警察機構が国境における国内外の人の出入国にフィルタリングを最大強化してきました。中でもフランスはビデオ監視、移動制限、厳格相談管理ファイル等を開発することによって、テロ規制を厳しく取り締まっています。

日本に在住していると、テロといえば9.11米国同時多発テロ事件を想起し、イラク、アフガニスタン戦争にどうしても衆目してしまいがち。今回のアルジェリア人質事件の犯行声明を出した、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)のモフタール・ベルモフタール氏もアフガニスタン戦争時にCIAに雇われていた米国に利用されたテロリストだということは周知の事実です。しかしその戦地であるアルジェリアの背景には、欧州のテロとの戦いの史実があることも、押さえておきたいものですね。

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