現代社会の病理を知る

覚醒剤で逮捕される人間はあとを絶ちません。なぜ危ない薬に手を出してしまったのか、理由はあとづけでいくらでも推察されますが、それでも本当のことは本人にしかわからないと言われています。果たして本当なのか。本当のことは本人だけでなく、誰にもわからないのではないか。そうした問いに立ち向かった本が石丸元章による『覚醒剤と妄想:ASKAの見た悪夢』(コアマガジン)です。


何を見ていたのか

著者は、もともと80年代に、子どもの噂話ネットワークなどをテーマとするライターとしてデビューしました。その後、社会の各所に存在するゴンゾー(ならず者)たちに興味を向け、ドラッグにまみれたジャンキーたちの取材を重ねるうちに自らも薬物中毒者となり逮捕されてしまいます。その過程をつぶさに記した『SPEED』(文春文庫)など数多くの名作を残しています。本書では、脱法ハーブにより薬物中毒治療の病院へ入院していた際に出会ったASKAとの交流から、現代社会においてドラッグはどういう風に位置づけられるのか、さらに薬物中毒者が抱く妄想は、果たして悪なのか。時に「電波系」として揶揄されるフレーズの妥当性などについて考証が重ねられています。本書では、著者が記す90年代のサブカルチャーの回顧録も記されていますので、ある世代の人にとっては懐かしく響くことでしょう。ドラッグを正面切って断罪するのではなく、その内実はどうなっているのかについて、ていねいに向き合っている良書です。

    
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