悲しみを記録すること

2015年2月に発生した川崎中1少年殺害事件は世間に衝撃を与えました。冬の寒い中、カッターナイフで切りつけられ、さらに全裸で川で泳がされた上に、そのまま投棄されて亡くなったのが13歳の少年であるばかりではなく、加害者が遊び仲間であった17~18歳の少年であったことも衝撃を与えました。


何があったのか?

事件はなぜ起きてしまったのか。その真相に迫った本が石井光太による『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』(双葉社)です。著者は、被害者の少年が暮らしていた川崎のほか、父親のIターン就職で過ごしていた隠岐島、さらに事件の裁判など、あらゆる場所に足を運び、話を聞きます。そこで浮かび上がってくるのは、圧倒的な孤独の世界です。

孤独なつながり

犯人の少年グループは不良ではなく、不良グループから使い走りにされるような弱い存在でした。ゲームやアニメを愛好するオタク的なタイプだったようです。しかしながらより弱い存在には強気に出て、そこで犠牲者となる少年と知り合い、手下として使います。彼らは友情で結ばれているようでいて、家庭などに問題を抱え、とにかく家にいたくない人たちが夜を徹して遊ぶ、あるいはだらだらと過ごすといった生活を繰り返しています。事件の凶悪さばかりがクローズアップされがちですが、その背景にある圧倒的な切なさ、空洞化した社会が本書では浮き彫りとなっています。

    
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