ノマドのひとつの形

ノマドというと日本ではノマドワーカーといった言葉に代表されるように、働く場所を選ばない自由な人たちといった印象があります。もともとノマドは遊牧民などを意味する言葉でした。そこには自由さがありますが、当然ながら根無し草といったイメージも伴いますね。

ひとつの実態を描き出す

ノマドのいわば負の側面というべきものに焦点を当てた本がジェシカ・ブルーダー (著)、鈴木 素子 (翻訳)による『ノマド:漂流する高齢労働者たち』(春秋社)です。本書は、2000年代にアメリカに出現した新しい貧困層にスポットを当てたものです。彼らは高齢者としてキャンピングカーでアメリカ各地を移動しながら暮らしています。

お気楽ではない?

それは老後のお気楽な暮らしのように見えますが、実態はそうではありません。その日のガソリン代を稼ぐために、訪れたそれぞれの地で安価な肉体労働に従事します。当然、休める時間などごくわずかです。これでも自由な働き方であると言えるのでしょうか。

居場所がない

そこにおいてはコミュニティや居場所の喪失といったものもひとつの問題としてあげられるかもしれません。彼らは自由なようでいて、どこにも属していないわけなのです。それは本当に幸せなことなのだろうかと本書は問いかけています。

これは日本でも?

本書を読み進めるに従って、やはり浮かばずにいられないのは、これは近い未来の日本の姿ではあるのだろうかというものですね。高齢者に対する福祉や社会保障といったものがどこまできちっとされているのか。もしそれが崩壊したならば、こうした本書に記されているような、決して自由ではないノマドたちが出現する可能性は十分にあります。最低限の衣食住、それは健康で文化的な最低限度の生活とも言い換えられるでしょうが、それはどのようなものなのかが気になる人には必読の本です。