一泊400円という安さに惹かれて…トランクルーム難民の真実

自宅に入りきらない荷物をちょっと預けておくのに、トランクルームというのは非常に便利である。
ウサギ小屋のような部屋に、トランクルームをちょい足しするだけで広々と生活できることから、近年、この業態が非常に増えている。
都会だけでなく、地方都市や中心地を離れたエリアにもかなり多い。

さらには、車やバイク、自転車などをいじって遊ぶための2階建てのものもあり、トイレや洗面までついているという。ライフスタイルの多様化で、人生で遊びを大切にする人間たちにとっては今後が楽しみな商売だ。
しかし、このトランクルーム。
現在、10年ほど前に社会問題となったネットカフェ難民に続けとばかりの貧困層の温床になりつつあるのをご存知か。
なんと、狭い2畳間ほどの空間で寝食する者が増えているというのだ。


ブラック会社が倒産し、一転した生活

非正規はもちろん、正社員という正規雇用でも明日やも知れぬ世の中。
毎月の給料がもらえるという保証など、超一流企業や公務員くらいでないとありはしない。

「光ファイバー通信系の会社に勤めてました。昼夜を問わず、テレアポ、営業回りで、馬車馬のごとく働かされていた記憶はありますが、給料は20万程度。それでも普通にマンションで生活をし、偏った食生活ではありますが、自炊して、真っ当に暮らせてはいました。でも、ある日突然、そのブラック企業が倒産してしまったんです。出社すると、社内には入れずに、債権者が押しかけていました。それからです、僕の生活が一転してしまったのは……」

と話すのは、現在、深夜帯にラウンジのチーフをやってなんとか生計を立てているという坂上さん(仮名、34歳)。
ドランクドラゴンの塚地に似た風体の彼だ。

彼は現在、それまで住んでいたワンルームマンション近くにあるトランクルームで生活をしているという。
その生活ぶりは、とても人間らしいとは言い難いものだ。実際に、どのような生活を送っているのか、さらに話を聞いてみた。

「う~ん、そうですね。最後の給料ももらえず、わずかな貯金を切り崩すには、ネットカフェはもったいない。一晩数千円というのは現状では非常に難しいんですよね。トランクルームに住むという発想になったのは、以前からそこを利用していたからです。今ではここに陣取っていたソファや大切にしてたギターを売り、寝袋とコンビニ弁当を持って、ここに忍び込む。窓のない個室とはいえ、冷暖房完備で月額12,500円というのは魅力的です。もちろんトイレも水道もないので、腹を冷やさないように細心の注意を払いながら、息をひそめ、なんとか生きています」

以前は、軽自動車に車中泊していた彼も、目先の金ほしさに車を売り払った。買い取り価格6万円。
彼は、その金で2ヵ月間は暮さないといけないそうだ。

「朝までやっているラウンジなので、早朝5時くらいにここへ帰ってきます。風呂は週に2日。銭湯を利用していますが、今の楽しみといえばそれくらいですかね。このトランクルームには管理人はいないので、2リットルのペットボトルに放尿し、どうしても我慢できないときには、そばにある小川にまたがって大便はします。とても人間とは思えない生活ですよね」

トランクルームの暗闇の中、店で充電しておいたスマホでずっとゲームをして過ごす日々。友達は昔からいないという。

「ラウンジで働きはじめたのは、ホステスと仲良くなれるだろうと思ったからです。ヒモにでもなれば、家もあるし、飯にも困らない。でも現実は厳しい。このルックスでは、店でイジメの対象になるだけでした。時給千円で8時間。水商売なら、収入のアシも付かないし、微々たる失業手当も満額もらえます。今が辛抱のしどころですから」

給料と失業手当が入れば、またワンルームを借りるという彼だが、就職先も決まっていないので先行きは暗い。

DV夫の暴力から逃げるために、トランクルームへ

取材2人目は女性だった。現在は、とある県の青果市場で野菜の仕分けなどの仕事をする、佐々岡さん(仮名、32歳)。マスク姿だが、眼だけで尾野真知子も似た美形に見える。
夫は、腕のいい鳶職人だが、酒を飲むと手がつけられないDV夫に変身する。それも佐々岡さんの鼻や肋骨が折れるほど、手加減なしの暴力だそうだ。

「とにかく、顔ばかり殴られます。それは、私がスナックや風俗で働いて、1人で生活できないようにするためなんです。以前は、地元のスナックで働いていたんですけど、そこでは結構人気がったことを、あの人も知っていて。出会ったのもそこでした。結婚してからというもの、専業主婦になり、生活費も彼が管理しているので、外に逃げるための余裕はなし。あまりの暴力に耐えられなくなったので、家を夜中に飛び出したんですが、行くあてもありませんでした。市が用意してくれているDV夫から逃げるためのシェルターへ入ったんですが、簡単にそこに入所していることを職員が思わす夫にバラしてしまったんです。で、報復が恐ろしくなって脱走。友達から4万円借りて、行きついたのがトランクルームでした」

なんということなのか。彼女の寄る辺はこの世にトランクルームしかなかった。
女性の自立、DV、役所の怠慢……彼女の話で現代社会の暗部が浮き彫りになる。

「私が入っているのは、管理人さんがいるトランクルーム。契約してからは、バレないように静かに入室し、眠って、管理人さんが出勤してくる朝には仕事へ出ます。一番大変のは、そのぅ……生理のときですね。私はすごく重いので、月に一回はすごくつらいです。お風呂は友達のところを貸してもらって……。でも、管理人さんにバレたことがあって……」
「そのときはどうされたのですか?」
「50代の管理人さんだったんですけど、話をすると親身になってくれました。私の人生を憐れんでくれて、お茶やお菓子、お弁当なんかも差し入れてくれて……」

いい話ではないか。世の中捨てたものでもないということだ。しかし、彼女の話にはまだ続きがあった……。

「それから1週間ほど経つと、管理人さんが深夜に私の部屋のドアを叩いたんです。管理人さんは結構酔っておられました。真っ暗な部屋。嫌な予感はしたんですが、そのまま押し倒されました。私も心に傷がある、でも守ってくれている管理人さんには感謝している、と伝えて、体は勘弁してほしいと……」

酒乱のDV夫でヒドい目に遭っている彼女に信じがたい仕打ち。考えられない。

私は、取材をしながら、ここでレコーダーを止め、彼女に謝礼を渡してお引き取り願った。もうそれ以上彼女を傷つけることはない。
ライターの世界では、このトランクルーム難民の話はよく聞く。
うまく生きることができない人々やどうしようもない事情を抱えて、トランクルームに逃げ込む弱者たち。
政務活動費を不正に利用する議員が次々と暴かれている今、もっと税金を使うべきところがあるのではないだろうか。

(丸野裕行)

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