マージナルを知る

マージナルという言葉があります。周縁といった意味合いがあるものですね。この言葉を人間に当てはめたものが安田峰俊の『移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々』(角川文庫)です。

国境と人種

国と国の境目とはなんでしょうか。日本は四方を海に囲まれているため陸路の国境といったものがありません。しかしながら世界のほとんどの国には隣国と国境を接している場所が多くあります。そうした場所には、双方の国の民族が入り乱れています。ひとつの国の周縁に、別の国の民族がいるといったこともあります。それは旧来の文化的な交流はもとより、紛争を逃れる難民問題など現在の問題もあります。

日本の中にも

本書では難民としてほかの国から日本へと逃れてきた人々が登場します。特に中国の新疆ウイグル自治区を取り上げた章は読み応えがあるといえるでしょう。中国国内で弾圧を受けるウイグル族の人々を支援する日本の人々の間にも分裂があり、単に反共産主義の立場からイデオロギー的にウイグル族を支援する人々などの姿が描かれています。それらは根本的な解決とならないことは確かかもしれません。

ほかには?

このほかには日本に生まれ育ちながら無国籍となった難民二世のベトナム人や、中国でも日本でもない立場を選び取りつつある台湾人など、個人と国家の間でゆれうごく人々が描かれています。日本に生まれ日本に住み日本語を話す日本人、といった当たり前の前提が世界のすべてではないと知るのに最適な本です。