社会・学生運動の歴史を知る

全共闘とは、「政治の季節」の代名詞として語られることが多いフレーズです。普通の大学に通う普通の大学生たちが、構造改革や、あるいは異議申し立ての手段として、ヘルメットを被り、バリケードを作りデモを行った。それが、警察の手によって解体される。ニュース映像などで度々流される東京大学の安田講堂の陥落の映像、並びにそのあと追い詰められていった学生を中心とする若者たちが起こした事件として、連合赤軍のリンチ殺人事件、さらにはあさま山荘事件などが取り上げられることが多いでしょう。しかしながら、これはある意味では整理された歴史、さらに言えば整理されすぎた歴史でしょう。


そのあとに何があったのか?

全共闘が終焉して以降も、学生運動や社会運動は積極的に行われていました。少なくとも現在のような大学キャンパスの燦々たる状況というのは存在しなかったのです。その知られざる歴史を丁寧にすくい上げたのが外山恒一による『全共闘以後』(イースト・プレス)です。

証言を取っている

本書で注目なのは資料をもとにしたものではなく、直接の運動の体験者たちに話を聞きに行っていることでしょう。しかも、誰もが知る有名人といったポジションの人間ばかりではなく、地方の国立大学で運動を担っていった人たちも含まれています。著者は彼らを探し出すにあたり、インターネットのSNSを駆使しません。もちろんまったく使わないけではないのですがそれは最後の手段とされています。ほとんどは地元の飲み屋や、喫茶店といった、それっぽい人たちが集まる場所を中心に点と線をつないでゆきます。そこで、証言をオーラルヒストリーとして取っている点は注目に値するでしょう。

東京中心ではない?

こうした社会運動史というものは、どうしても人が多い場所で生起します。国会前に人々が集まっているといったトピックばかりが注目されてしまうのはある意味では仕方がないことでしょう。しかしながらそれは同時に東京を中心にしか物事を考えず、東京中心史観を生み出してしまいます。一方で著者はもともと福岡県を中心に活動を行ってきた人物であるだけに、その時点で非東京的な視点を獲得できていると言えるでしょう。

    
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